揺曳する境界

生きてるうちに私が感じた事物をデータ化した何か。

さよならだけが人生だ

(小2)猛暑の予感を感じながら車へ荷物を一心不乱に詰め込んでいた。そこへ君がやってきて、私は気がつかないフリをして家に入り畳に置いてある荷物を必要以上に弄っていたら母親から、「◯◯ちゃん来てるよ。」の声 
窓から見た彼女の顔は少し神妙で、私になにかを言いながら、鯨のガラスが入ったキャンドルを渡してきた。
私はもう彼女の顔を見る事が出来なかった。
彼女は引っ越した。物理的距離は当時余りにも強大な力を持ち私たちを引き裂いた。

しばらく文通をしていた。
しかし返信する間隔が徐々にあいていき、後半からはもう、手紙の内容にお互いの情報に頻繁に誤りが生じるくらいになってしまった。そしてやがて私からやり取りを途絶えさせてしまった。

手紙で交わされた言葉 
手紙そのもの
彼女の輪郭
彼女の顔
酷いことにすべて失った。
手紙は私の引越しの時に母に捨てられた

なのに、なのにまた今年もこの季節になって、私の中の欠片が燻って日増しに熱を帯びていく。こんなにも身勝手に相手を想う、最後の記憶のみゾンビのように死ねない残酷さ。他は全部忘れました。さよならだけが人生だ。